海は母 母は海

幼稚園のプランターの花に1頭(とう)の蝶がとまっていました。
蝶を見ると、私はすぐに、
三好達治の郷愁(きょうしゅう)」という詩を思い浮かべます。

郷愁」という詩の一節(いっせつ)に、こんな言葉があります。

海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。
そして母よ、フランス人の言葉では、
あなたの中に海がある。


<解説>

日本語の「海」という漢字の中には「母」という文字があります。
フランス語の母「la mère(ラ・メル)」の中に、
海「la mer(ラ・メル)」があるのです。
海は母。母は海。
母はいつも、「海のように広い心と深い愛情」で、
私たちを包んでくださっているのですね。
そして、菊武幼稚園の園児たちを、
「海のように広い心と深い愛情」で包んでくださっている
保護者の皆様方に、心から敬意を表します。

<全文>

郷愁 三好達治

蝶のような私の郷愁
蝶はいくつか間垣(まがき)を越え、
午後の街角に海を見る。


私は壁に海を聴く。
私は本を閉じる。
私は壁に凭(もた)れる。
隣の部屋で二時が打つ。


「海、遠い海よ!」と私は紙にしたためる。

海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。
そして母よ、仏蘭西(フランス)人の言葉では、
あなたの中に海がある。


三好達治『測量船』より引用

この「郷愁」という詩に、多田武彦氏が曲をつけた男性合唱曲は、
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